年末調整シリーズ第3回目。
テーマは「年末調整額の計算」です。
第1回目に年末調整のスケジュール感や、やらなければいけない事務を紹介しました。
(目次的に使えるので便利です)
第2回目は、そもそも源泉徴収とはなんだ?というところから紹介しました。
ということで今回は、実際に日々の源泉徴収業務と年末調整をがっちゃんこして・・・
実際に年末調整の税額を計算していこうというものになります!
ただし、僕は税理士ではないので個別の相談等に乗ることは出来ません。
架空の従業員、潜水太郎くんに登場してもらい、一般的に弊社のやっているやり方をご紹介したいと思います。
事前に以下の1回目と2回目の記事を読んでいただけると理解しやすいと思います。
まだ読んでない方はご一読してみてください。
年末調整の流れ
大雑把に年末調整の税額の計算の仕方の流れを確認しましょう!
- 月々の源泉徴収税額の計算
→預かり金として会社で保管 - 年収から控除項目等を考慮し、正確な税額を計算
- 正確な税額(②で求めたもの)と①で集めた源泉徴収の差額を年末調整で還付or追徴
- 1月10日までに納付
この4段階のステップにわけて考えると非常にわかりやすいと思いますので、次章で見ていきます!
と、その前にお馴染みの潜水太郎君に出てきてもらいましょう。
潜水太郎
28歳
独身・子供なし
2017年1月1日入社
年収240万円(月収20万円)
社会保険料252000円(月21000円)
通勤費8000円
ダイビングのインストラクターとしては普通くらい?
もらいすぎ?まあ、その辺はいろいろありますが・・・
今回は計算しやすいように月給20万円にしておきました。
社会保険料に関しては、弊社事務所がある東京都の健康保険・厚生年金保険の保険料額表(29年度)から算出しました。
全国協会健保のホームページから
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h29/ippan9gatu/h290913tokyo.pdf
※PDFが開きます
年末調整の税額の計算
①毎月の源泉徴収額の計算
この毎月の源泉徴収の金額は前回の記事に詳しく説明してありますので、しつこいですが確認してみてください。
今回は簡単に
月給20万円から社会保険料21000円を引いた179000円に対して月額の源泉徴収表を見てみます。
扶養0人の太郎君は4,050円ですね。
この時通勤費は非課税なので考慮していません。
ということは、12月の給料までに太郎君から預かっている源泉所得税は44550円(1月~11月分)です。
そのうち、1月~6月の源泉徴収税は24300円(4050円×6か月分)は7月10日に既に納税しています。
つまり44550円-24300円で、太郎君から現状預かっているお金は20250円ですね!!
24300円は既に税務署に納めているのです。
ここが後々重要になってくるので注意してくださいね。
※今回も納期の特例を利用していることを前提としています。
②正確な年収の計算
年収に対する所得税の計算の仕方を見ていきたいと思います。
まずは所得税に関してですが、累進課税といって所得によって税率が代わってくるのはご存知だと思います。
ここで注意をしたいのが収入ではなく、所得に対して税金がかかるというところです。
この収入というのは、給与の額面だと思ってもらえば大丈夫です。
そこから、様々な控除をして残った金額を所得と言います。
年収は税金に関わる用語では給与収入と言います。
太郎君の場合は240万円ですね!
ちなみに、この控除の項目を活用すること(中退共、確定拠出年金など)で同じ給与でも将来に資産を残すことが出来るのです。
ではまず、太郎君の所得を調べてみましょう!!
太郎君の所得の計算は以下の式になります。
所得=収入-給与所得者控除-基礎控除-社会保険料控除-各種控除
①給与所得者控除
会社勤めをしている人にも、スーツを買ったり、筆記用具を揃えたり、給与を稼ぐために様々な経費が掛かっています。
その経費を1人1人が申告するのではなく、ルールを決め均等に控除しましょうというものが給与所得者控除です。
控除額は以下の通り。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収用の支払金額) |
給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% ※収入が65万円未満の場合も65万円 |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1000万円超 1500万円以下 | 収入金額×5%+170万円 |
1500万円超 | 245万円(上限) |
つまり太郎君の場合は給与収入が240万円なので
240万円×30%+18万円=90万円
が控除されるわけですね!!
②基礎控除
基礎控除は誰でも条件なく適用することのできる控除の金額です。
一律で38万円の控除額になり当然太郎君も受けることが出来ます。
③社会保険料控除
社会保険料控除は支払った「国民・厚生年金保険料や健康保険料、介護保険料等」を控除することが出来ます。
納税者本人はもちろん、生計を一緒に営む家族の分も含めて控除することが出来ます。
太郎君の場合は前提の条件の通り、252,000円の社会保険料を支払っているので控除を受けることが出来ます。
④各種控除
今回、太郎君は関係ないのですが他にも様々な所得控除があります。
これらをうまく活用することが節税につながります。
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 障がい者控除
この辺が年末調整で扱える控除になります。
他にも医療費控除等もありますが、それは年末調整ではなく個人で確定申告をしてもらうことになります。
さて太郎君に話を戻しましょう!
所得の計算は以下の式でしたね。
所得=収入-給与所得者控除-基礎控除-社会保険料控除-各種控除
これを太郎君の実情に合わせると
所得=240万円-90万円-38万円-252,000円-0円
つまり所得金額=868,000円になります!
この金額に累進課税の所得税率を当てはめます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円を超え4000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
太郎君の所得は195万円以下に当てはまるので税率は5%ですね!
所得税=868,000円×5%
つまり1年に収める所得税は43,400円となるわけですね!!
③年末調整で還付
まず1年間に収めるべき所得税は②で計算した43,400円ですね。
それでは概算した源泉所得税は合計いくら給料から天引きされていたのでしょうか?
①に戻って確認すると・・・・
源泉所得税は月4,050円で11月までで既に44,550円を預かっているハズです!
この時点で既に43,400円をオーバーしています。
このオーバーした1,150円を12月の給与で還付金として太郎くんに返してあげれば良いだけです。
②の計算さえやってしまえば・・・
年末調整自体はそんなに難しくはないのですね。
④1月10日までに源泉所得税を納付
ここも源泉所得税を正しい税額に直して納付しましょう。
7月10日の納付は単純に4050円×6か月分=24300円を既に納めているはずです。
なので今回は計算した所得税43,400円から24,300円を差し引いて、19,100円を納付すれば良いのです。
まとめ
今回は年末調整の税額の計算について、潜水太郎君を例に見ていきましたが、そこまで難しくはなかったですよね。
税金や計算というと、それだけでもう嫌だってなってしまう方も多いとは思います。
しかし、1個1個見ていくとそこまで難しい計算もなく表に当てはめていくだけなんです。
もちろんプロの税理士に任せてしまえば簡単ですが、会計ソフトを利用すれば以上の計算を自動でやってくれますし、中には書類まで作ってくれるものもあります。
もしかしたら余計にかかってた費用が削減できるかもしれないですね。
毎年ある事務なのでこの機会に覚えてしまうなんてのも良いでしょう。
今回は茂野が持っていたFPのテキストを参考に本記事を書きました。
あくまで計算も一般例であり、前提条件以外の情報は考慮していません。
参考にして頂きながら、ご自身で調べて行っていただくのが1番良いかと思います。