費用分析から会社の仕組みを知る
当たり前ですが、会社の利益は以下の式で表されます。
売上-費用=利益
非常に簡単な式ですが、多くのことを教えてくれます。
※今回も財務面のみの観点からダイビング業界を考えてます。サービスの質の違いや個人の魅力と様々な要因は排除してますので実情と違う点はご勘弁下さい。
例えば、来期の収益目標を立てよう!と意気込んだは良いが何から手を付けてよいのかわからないといったことがあると思います。
そんな時は一旦、売上-費用=利益の式に戻ります。
そうすると会社にとって1番大事なのは利益ですよね。
利益がないと会社は続きません。
利益の目標を立てよう。
さて、利益を予測するには売上と費用を分析する必要がありますよね。
売上目標をいきなり立てるのは難しいです。(根拠のない前期10%アップなんてのは目標ではありません)
じゃあ、どうするのか?
ここで出てくるのが費用です。
費用は前期の実績からある程度予測できるものが多いです。
もちろん事故や火事等の突然の出費もありますが、それを回避するために保険があり、やはり費用はマネジメントしやすいのです。
この費用から売上、利益を分析しようとすると、前回検証した損益分岐点の考え方が非常に大事になります。
この損益分岐点の考え方は、赤字にならないための売上高を知るだけでなく、その事業の成長の仕方や戦略の取り方にも使えます!
今回は変動費と固定費のバランスについて見ていきたいと思います。
固定費と変動費のデメリット
さて、固定費主体の会社と変動費主体の会社ではどちらに優位性があるのでしょうか?
固定費とは売上に左右されない費用(家賃や人件費)。
変動費とは売上に比例して変動する費用(タンク代等)でしたね。
この費用のバランスを見ることで売上と利益の関係性が見えてきます。
変動費型のビジネス
極端な例で費用が変動費だけの会社を見てみましょう。
上の図を見ていくと総売上高に比例して費用総額も増えていっています。
利益を2倍にしようと思えば、売り上げを2倍にする必要があります。
また、この図をみるとわかりますが、変動費だけの会社は赤字になりようがありません。
少しの売上高があれば会社は黒字になっていきます。これは変動費主体の会社の大きなメリットです。
固定費型のビジネス
次も極端な例で固定費のみの会社を見ていきましょう。
上の図を見ていくと点Aの売上高までは赤字です。
もし銀行にお金を借りて固定費をまかなっていたら、赤字の状態では返済することが出来ないので、会社が倒産してしまいます。
これは変動費を抱える大きなデメリットなので要注意です。
ここまで聞くと固定費は悪で変動費型の会社の方が優位に感じますが・・・
固定費型にも大きなメリットがあります。
それは損益分岐点を超えると、少し売り上げが増えるだけで利益が一気に増えることです。
固定資産の回転率をあげることで売上の伸び分をそのまま利益にすることが出来るのです!!
ここでメリットデメリットをまとめていきます。
〇変動費主体型
メリット:少しの売上で黒字化する
デメリット:利益を伸ばすためには相当分の売上の伸びが必要
〇固定費主体型
メリット:損益分岐点を超えると売上が少し伸びれば利益が一気に伸びる
デメリット:ある程度の売上がないと赤字になる。
都市型ショップの参入障壁の低さ
独立するなら!?
さて、ここまでは教科書的に固定費型産業と変動費型の産業を見てきました。
恐らくダイビング業界で言うと固定費型は現地サービスでしょう。
施設の賃料、水道代等(若干は変わるかも)、タンク、コンプレッサー、損害保険等、ほぼすべてが固定費と言っても良いんじゃないでしょうか??
逆に変動費ってなにがあるんでしょう?
漁協への納金以外、思いつきません。
変動費型は現地型、都市型ショップでしょう。
お客さん1人ごとにタンク代、施設使用料。講習ならテキスト申請費、器材販売なら器材仕入と変動費の占める割合が多くなると思います。
みなさんが独立するとしたら・・・
都市型、現地型どちらで独立しますか??
恐らく90%の人が都市型、変動費型のビジネスから始めますよね!?
赤字になるのは嫌だし、恐いですからね。
少なくとも固定費がなきゃ倒産することはないわけです。
もちろん弊社も今までは徹底的に変動費化することに力をいれていました。
車はほぼレンタカー、事務所もレンタルオフィス、現場に出る時は非常勤スタッフや他のショップと共同での講習、絶対に在庫を持たない等・・・まだまだ涙ぐるしい努力が(笑)
ここで見えてきたことがあります。
都市型ショップの参入障壁の低さです。
これはダイビングの良い面でもあり、悪い面でもあると思います。
安全面等は無視して財務面から見ると、副業としての参入障壁の低さは明らかです。
タンクや施設も借りられるし、レンタル器材ですら現地で借りられる。
テキストは都度指導団体に頼み、学科講習は最寄りのレンタルスペース・・・
出来ちゃいますよね!(笑)
成功するかどうかは別として・・・
この参入障壁の低い業界というのは軒並み利益率が下がっていく傾向があります。
例えば日本の商社(卸売業)は軒並み売り上げが低迷していますね。
これはインターネット化が進み、個人がAmazonで買い付けて販売することが出来るようになったため参入障壁が下がり、軒並み利ザヤが低下していきました。
そりゃそうですよね。
簡単に参入出来て儲かるなら誰もがその利ザヤを取りに行くでしょう。
ただし、ダイビングショップには、なかなか大手企業が参入してきませんよね?
それは儲かりづらいからです。
僕が銀行員をしていた際に会った社長がこんな皮肉な現実を教えてくれました。
『儲かりづらい仕組みこそ小さな業界を大手から守っている』
確かに儲かりづらい仕組みこそ個人のダイビングショップがたくさんある業界を守ってくれているのかもしれません。
では現地サービスはどうでしょう??
現地サービスには増し分所得
やはり現地ショップの参入障壁は高いですよね。
例えばコンプレッサーやタンクを揃えたり、施設を整備して・・・
新たに始めるには途方もないお金が掛かるように感じます。
この他にも漁協との関係性や、各地のサービスで作る安全協議会なんかも財務面以外の参入障壁となっているでしょう。
僕のいた大瀬の現地は施設使用料やタンク代、宿泊といった変動費のかからない売上だけでビジネスを成り立たせていました。
施設を提供したりタンクを提供すること。つまり固定資産を収益に変えることで利益を得ています。
そう考えると、現地サービスのガイドはなんでしょう??
それは損益分岐点までの売上を上げるのではなく・・・
それ以降の増し分利益にあたるんですね。
極端な話、損益分岐点を施設で超えているのでガイドはする必要ないのです。
現地ガイドのニーズはめちゃくちゃあると思います。
だからこそ、現地のガイドの価格はめちゃくちゃ高くて良いと思うんです(笑)
だって増し分利益なんですから。
現状は現地のガイドの価格が1番安いですよね。
まあ変動費がないので当たり前と言っちゃ当たり前ですが、低価格で提供して他の仕事もある上にガイドもあり非常に大変になるくらいなら割り切ってガイドは増し分利益ってしちゃった方が良いと思います。(財務的に見てです。イチ消費者の僕としてはやめて~と思ってます)
どうやって増し分利益を取るか?
前回の損益分岐点でも考えましたが、ダイビング業界には絶対的に講習やガイド以外の増し分利益が必要になります。
現状はそれが都市型ショップでは器材販売、ステップアップ、現地ではガイドサービスだと思いますが、なにかそれ以外を思いつきたい(笑)
例えば、リフレッシュダイブとかそうですよね。
フォト派やリフレッシュ向けサービスとしてマンツーマンのダイビングの提供。
ガイド1人に対してゲスト4人で2ダイブ行くところに、1人ブランクもしくはカメラ派ダイバーがいます。
普通だったら1本目4人、2本目4人でいくところをマンツーマン料金をもらい、1本目3人、2本目1人、3本目4人で潜るなんて事も出来ますからね。
みんなで潜る事もダイビングの楽しさですからね。
こんな増し分はすぐ思いつきそうですが、常にプラスアルファの満足と収益を考えることが大事です。
一般には稼げないと言われるダイビング業会だからこそ外からの圧力が弱い。大手が進出しづらい。
だからこそ工夫次第で稼げたり、好きなことやれたり、魅力的な業界に見えてしまうわけですね。
偉そうに言いましたが・・・
あくまで財務的に見てということです良し悪しの話ではなく
客観的に新たな可能性が見つけられたらと思っています。